
影ちゃんにはああ言ったが、出来ればヴィルを頼りたくない。
きっと上手いこと利用されて、嫌なことを押し付けられるような気がしてならないのだ。
しかし、私がこんなことを頼れるのはヴィルしかいない。
仕方なく、ぴょいっと空間を渡ってヴィルヘルム城へ。
幸いにもヴィルは暇そうだった。

「あのさー」

「お小遣い欲しいの。その代わり、ヴィルが頼まれた依頼を引き受けるから」
「……少し待っていろ」
目の奥が光ったように見えたのは気のせいだと思おう。
少し待つと、大量の紙を抱えたヴィルが戻ってきた。
「好きなものを選べ」
「ありがとー」

さてさて。
どんなものがあるのかな……。

「貴様の力を使えば、この依頼を一日で殆どこなせるだろう」
「しません!!!何か他にないの?」
「……面倒な」
そう言いつつも、ヴィルは一枚の紙を差し出した。
「面倒だが、貴様の力ならすぐに終わるだろう」
見れば物の運搬だった。
確かにこんなもの私なら一瞬だ。
「ありがと。じゃあこれやらせてもらうね」

ヴィルにしては太っ腹で十万という大金をくれるということだった。
私はすぐさま依頼をこなし、この話をした十分後には現金で十枚お札を貰った。
「ねぇ、ヴィル。もしね、またお金欲しいって言ったらくれる?」
「貴様が相応の働きを見せたのならばやろう」
「いくらまでくれる?」
「いくらでもやろう。人間の一生では使い切れぬ額であろうとも」
「わかった!じゃあ、足りなくなったらまた頼るね」
「ただし。その場合は仕事のえり好みはさせん」
「……判った。それも頭にいれとく」
次は頼らない方が吉だ。
確実に血なまぐさいところへ派遣される。
「お小遣いありがと。じゃーねー」
これで資金もバッチリだ→